工場の生産現場からソフトウェア開発へコードクリサリスのブートキャンプがトヨタの「挑戦」と「変革」をサポート

工場の生産現場からソフトウェア開発へ コードクリサリスのブートキャンプがトヨタの「挑戦」と「変革」をサポート

9/16/2023
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コードクリサリスは、企業の課題の解決やニーズに沿ったソフトウェアエンジニア教育プログラムを提供しています。昨今話題となっているリスキリングの文脈からも、ソフトウェアエンジニア教育のニーズは高まっています。このたび、トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)にてゼロからエンジニアを育成するプロジェクトに、ヴイエムウェア株式会社(以下、ヴイエムウェア)とコードクリサリスがデザインしたプログラムをご活用いただいています。

今回は導入に至った経緯をトヨタのデジタル変革推進室 室長の泉賢人氏に、実際にプログラム(DIG=Digital Innovation Garage)を受けエンジニアやプロダクトマネージャー(以下、PM)として活躍されている社員の方3名にはDIGに応募した経緯やプログラムを受けての感想などを伺いました。

ソフトウェア開発の内製化と社員のリスキリングをリンクさせる

自動車販売台数世界一を誇り、日本を代表する自動車メーカーでもあるトヨタ。自動車製造にとどまらず、「モビリティカンパニー」として自動車のみにこだわらず、クルマのあり方を見直し、街や人をつなぐ企業へと変容の最中にある。

そんな中でDIGは2021年に発足。「デジタルの登場によって、あらゆる業界で大きなパラダイムシフトが起ころうとしています。自動車産業に関わる我々にも大きな変化が訪れています。新しいことを学び、仕事として活かせるようになっていく型を作りたいと考えました」と泉氏は話す。今後、製造や販売の現場の在り方が大きく変わっていくことが想定される状況を、これからの企業成長にいかにつなげていくかを考えていた。

デジタルツールを制作する際に、社内にはリソースがないため外注するが、ツールが完成したらその仕事はそこで終わりとなる。「その状態が、トヨタの文化にも合わないしどんどん世の中から取り残されるなという危機感がありました」と泉氏は課題の1つについて口にする。トヨタには「カイゼン」の文化があり、カイゼンとはやり続けること。カイゼン後はすでにカイゼン前だという意識が全社員に浸透している。

「クルマという『もの』はいいのですが、お客様へのサービスを良くしていかないと使い続けてもらえないという危機感があります。例えばトヨタ本体のお客様のIDと、トヨタレンタカーのIDを統合するなどして、お客様にストレスなく弊社のサービスを使い続けていただけるようになるのが理想ではあります」

デジタルツール、ソフトウェアやサービスでも「カイゼン」していくためには、ある程度社内で内製化できるようになることが必要だ。「現状では弊社は非常にサイロ(縦割り)の組織のため、部署をまたいで一緒に仕事をしたり、情報共有をしたりすることが苦手だと考えています。お客様を起点にして、機能横断で働くことにチャレンジすることで、クルマの未来をよくしていきたいと考えました」。その思いからできたのが、部署関係なく全社員から希望者を募り研修を受けてもらい、エンジニアとしてリスキリングするDIGブートキャンプ(以下、BTC)だ。

選抜された候補者のみが受講できるBTC

コードクリサリスが教育を担当することになったのは、もともとトヨタがヴイエムウェアのTanzu Labsにソフトウェア開発および開発者育成のための伴走支援サービスを依頼していた縁からだ。Tanzu Labs がサービスを提供する際には、ある程度のスキルを持ったソフトウェアエンジニアがいることが不可欠。トヨタ社内でソフトウェアエンジニアを育成したいと考えたが、エンジニア育成のノウハウがないため、ヴイエムウェアとコードクリサリスとがパートナーシップを組んで21年9月からBTCがスタートした。

泉氏はコードクリサリスを選んだ理由として「技術力の高さが決め手となりました。弊社ではTDD(テスト・ドリブン・ディベロップメント…テストコードを書いた後に、テストをクリアするようにプロダクト本体を実装する開発手法)をとっていきたいと考えていましたが、現状それを教えられるのが日本ではコードクリサリスだけでした」という。また、まだ日本では一般的でない2人で1つのコードを作っていくペアプログラミングの手法につなげる教育を行えることも大きな理由となった。

とはいえ、手を挙げた全員がDIGブートキャンプに参加できるわけではない。希望者はまずは1時間程度の「DIGオリエンテーション」に参加(現在はオンライン学習)。その後、1日の「初心者のためのプログラミング入門講座」、20日間の「プログラミング基礎」へと進む。最終的に3カ月の「プログラミングブートキャンプ(BTC)」を受講できるのは、ここまでのクラスでエンジニアへの興味を示した参加者やモチベーションの高い参加者のみで、半年ごとに30〜40名ほどが選出される。また、このプロジェクトへの参加にあたってはDIGへの異動という形になるため、上司の許可が必要となる。

泉氏は「部署によっては人員がマイナスになってしまうので、なかなか他部署の理解を得るのは難しいなとも感じています。ただ、『お客様のために』という視点を持てている所属長は『全社的に貢献してほしい』と候補者を送り出してくれます。回を追うごとに『お客様のために会社全体としてこうあるべきだ』という視点を持つ人が増えてきたと感じて、良い傾向だと思っています」と話す。

講師の姿勢に見た「ソフトウェアの世界」

入社7年目の梅林大幹さんは、DIGブートキャンプに参加する前は組立生技部に所属し、車を組み立てるための機械を仕入れる際に、トヨタの規格に合っているか、安全に問題がないかなどを確認する仕事をしていた。「すべてがトヨタのルールを専門に扱っている部署だったので、トヨタの外に出たら何もできないな、と気づいたんです。世界で通用するスキルが欲しいなと考えて、iPhoneなどでソフトウェアを身近に感じていたので、ソフトウェアの道に進みたいと転職を考えていたときに元職場の上司がこのプログラムを勧めてくれました」と、タイミングと縁がありDIGブートキャンプへの参加が決まった。

まったくの初心者からの参加だったため、言語も出てくる単語もまったくわからないという状態。「BTCではレクチャーについていくのが本当に大変でした。でもその分、日々新しいことを学べるし、昨日できなかったことが今日できるようになっていると、成長している実感をすごく感じられました」と梅林さん。一番大変だったけど、一番好きな3カ月だったと話す。

特に印象に残ったのは、講師の姿勢だ。元の部署ではやらなければいけないことは全て教えてもらうという受け身の姿勢だったが、ソフトウェアの世界に入り、自ら取りに行かないと情報もスキルも入ってこないのだと思い知った。「はっきりと言われたわけではないんですが、日々接していく上で『ソフトウェアの世界ってこういうものだよ』と講師の方達の雰囲気、振る舞いから感じました」

現在はソフトウェアエンジニアとして開発に携わっている梅林さん。元部署ではまず要件定義をしてから設備を組み立てることが多かったが、今はまず作ってみて、ユーザーの反応をみて再構築と、180度仕事のやり方も変わった。「この先もし元職場に戻ったり、別の部署に異動になったりした際も、ここで学んだ働き方を踏まえてベストな仕事の進め方もできるのではと思います」

開発を学び、仕事へのマインドも変わった

梅林さんと同期にあたる庄子優太さんは、ものづくりエンジニアリング部に所属しており、工場で使うための設備を作る機械加工に携わっていた。そこで加工の作業者に特化したWebアプリを作るプロジェクトに参加。ほぼゼロから勉強しつつアプリを制作する経験をし、ソフトウェア開発の面白さを感じ始めていたところ上司からDIGブートキャンプの話をもらい、推薦してもらったという。

実際にBTCに参加しての感想は「きついなんて言葉じゃないです」と笑う。ソフトウェアエンジニアとして勤務する今でこそ、無理のない働き方をしているが、「ブートキャンプに関しては完全に別です。乗り越えなきゃいけない壁だと思って3カ月やってきました」と思い返す。BTCの中でも2週間でアプリを作る課題があり、とにかく調べながらアプリを完成させたのが印象に残っている。「一言で言うなら、人生で一番きつかったけど一番充実していた3カ月ですね」

個性豊かな講師陣のことも思い出深い。「特にえりこさんに、一番最初のアセスメントで『簡単だから余裕だと思うよ〜』って言われたんです。油断して挑んだらボロボロで、誰一人受からなくて(苦笑)。遠回しにソフトウェアの厳しさを教えてくれたのかなと思います」。ちなみにえりこさんは名物講師として他の受講生からも名前が上がり、「研修中えりこさんが夢に出てきた」と話す受講生もいたほどだ。「本当に、めちゃめちゃ大変でしたけど雰囲気込みで楽しくやらせてもらいました。学校というよりは、仕事をしつつ学べていると言った感じでした」と話す。

このプロジェクトに参加するまでは、自分の部門でずっと車を作ることに貢献していくものだと思っていたという庄子さん。DIGブートキャンプを通して、ソフトウェアを通じての貢献という新しい形を知った。「仕事に対しても、お金を稼ぐためだけじゃなくて『仕事を通じて誰かに貢献したい』というマインドに変わってきました」。さらにソフトウェア開発を通して、それまで100%の完璧主義だった自分が「その時のできる完璧を小さく積み上げていく」という思考に変わったという。「どれだけ価値あるものを内製で作れるか。デジタルでいろんなことを打ち破っていきたいと思います」

生産現場からPMへ、世界が広がった

勤続19年目となる鈴木郁恵さんは、もともと工場の生産現場でフォークリフトやクレーンに乗ったり、ボルトを閉めたりと車体製造の最前線にいた。「現場でずっと体を動かす仕事が中心でした。ですが今後生産が縮小し、自部署がシャットダウンすることもあり得るなと考え始め、何か手に職をつけたいと思っていました」。エクセルでマクロを組むなどの経験もあったため、プログラミングに興味を持って応募したと話す。

研修については「めちゃめちゃ大変でした」と苦笑する。基本的にBTC時は講座は就業時間内に終わるが、終業後は課題や復習をしないと講座についていけない。「1つ遅れるとすべてついていけなくなるのが辛かったですね。復習もしつつ、インプットもしつつ……と、今まで一度もなかったキツさがありました」。スパルタなプログラムだったが「でも、聞きたいときに講師の方に聞ける環境はとても良かったです。1人じゃないという思い、講師の方、受講者の方みんなで一緒にやれるすごくいい環境だったと思います」と思い返す。

BTCは途中からソフトウェアエンジニア向けとPM向けに分かれ、鈴木さんはPMのコースを受講した。「プロダクトを自分たちで作ってみる」という課題があり、近所で情報共有ができる子育てのコミュニティサイトを作ることになった。「実際に動かすサイトを想定し、どう課題解決していくかなどを考えていきました。非常に実践的で、サイトマネジメントの考え方を学べました」

現在は実際にPMとして業務に当たっている鈴木さん。BTCを経て「ずっとトヨタ式の表現に慣れていましたが、シンプルにしすぎたら伝わらないんだと実感し、言葉をとても大事にするようになりました」という。ユーザーを中心に考えることを自分の軸として持てるようになり、それを起点に自分の意見を持てるようになれたと実感している。

これまで「キャリア」という視点で自らの働き方を考えたことがなかったという鈴木さん。「この世界に入ってみて、プロの方と仕事をしてその方の経歴を知ると、『こういうことを経験して今があるんだ』と気付かされて、自分も考えていきたいと思うようになりました。本当に世界が広がりましたね」

3人とも、2年前の自分からは想像もつかないほど世界が広がったと口をそろえる。他の社員にも受講を勧めているが、部署の理解が難しい場合や「自分にはできないかも」という反応もあり、全員が今すぐに変われるというわけではない。それでも着実に進んでいる一歩。泉氏は「トヨタにできたんだから、他の企業にもできるよって広げていきたいですよね」と話す。コードクリサリスはこれからも今の時代の変革に寄り添い、伴走者として多くの受講生に向き合っていく。

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